「生産技術ってきつい? 年収は高い? 具体的に何をする仕事なの?」
就活生や転職活動者でそう考えている人は多いのではないでしょうか。
大手自動車関連メーカーで5年以上働いた経験から、生の意見を伝えます
生産技術を志望しているけど志望動機に何を書いたらいいか分からない・・・
なんて人もこの記事を読めばヒントを得られるはずです。
生産技術の仕事内容

※会社の仕事自体は具体的に書けないため簡潔に書きます
製作見積もり
営業が仕入先や設計から仕様や要求項目をヒアリングし、生産技術がその製品を作る手順を考えます。
製作方法を考え、材料・設備費・人件費から製作コストを算出します。
新製品の生産導入
見積後、製品の受注が決まると、生産ラインで流すのための準備を行います。
試作計画を立案し、治具や設備など手配を準備します。
その後、試作を行います。安定して品質の良いものが作れるように、問題点の抽出と、対策を行います。
新設備の導入
設備を導入するのも生産技術の仕事です。新設備を導入するのは主に以下の理由です。
- 仕入先のニーズに答えるため
- 新しい技術の導入するため
- 現在の問題を解決するため
まず、どのような機械を入れるか、どのような構成にしたら良いか、どうしたら使う人は使いやすいか、を考えます。
設備導入は扱う金額も大きく、関わる人数も多くなります。そのため最もマネジメントスキルが必要な仕事です。
生産性の改善
生産ラインは、様々な問題を抱えています。
製品や設備により、不良が出やすかったり、安定して生産することができず稼働率が低かったりといった問題です。その解決策を考えます。
解決方法は様々であり、新しいアイデアを出したり、他の部署に頼んだり、あるいはメーカーを使用したりします。
いかに安く、効率よく問題を解決するかが生産技術の腕が問われます。
生産技術の勤務地

田舎
生産技術の勤務地は田舎です。
工場と密接に関わる部門であるため、勤務地は工場か、工場にすぐに向かえる場所になります。そのため田舎である確率が圧倒的に高いです。
都会に工場をもつ会社もあるため、探せば都会勤務できる会社もあります。
大手メーカーだと全国に工場を持っているので、大手メーカーで生産技術を行う場合、都会勤務は難しいと思います。
希望の勤務地がある場合は工場の場所を調べて会社を選ぶか、配属時にしっかり主張しましょう。
海外
今後の製造業において海外は避けては通れません。分野によりますが、日本国内は市場が飽和状態であるのと、人口減少により成長が見込めません。
国内製造業の海外売上高比率は毎年上昇し続けています。
したがって海外展開をしているメーカーであれば、海外が勤務地になることもありえます。
私の会社では30代くらいまでは2〜6ヶ月の出張で行くことが多く、40代以上の管理職だと3〜5年駐在の可能性がでてきます。
どうしても日本で働きたい!と考える人には難しい職種かもしれませんが、これは生産技術に限ったことではありません。
製造業全体が海外志向となっていますので、製造業で働く以上、海外は考えておく必要があります。
生産技術の給料

ずばり年収は?
「生産技術 年収」 で検索してみました。
転職会議によると、生産技術職全体の平均年収は452万円です。

私の年収は入社5年で約550万円です。
もちろん残業代込みです。月あたり30−50時間くらい残業をしてます。大体一日あたり2時間くらい残業をしているペースです。もし残業をしていなかったら、年収は400万円程度です。
平均よりは高いですが、5年働いてこの数字は決して高いほうではありません。トップクラスの会社なら5年でも700−800万円はいくはずです。
出世は?
基本的には年功序列で、ある程度年数を重ねた社員の中で仕事のできる人が出世していっています。
生産技術だからというわけではなく、大体の日本企業はそういった上がり方だと思います。
私の会社では設計と並んで、最も出世しやすい部署で、製造業では花形部門の一つであると思います。
生産技術にはどんな人が向いている?

コミュニケーション能力が高い人
どの仕事でも共通するものですが、コミュニケーション能力は重要です。生産現場だけでなく営業・保全・品質部門、メーカーなども巻き込んで仕事をしていかなくてはなりません。
技術職というとパソコンに向かって黙々と作業しているイメージがあるかもしれませんが、生産技術は違います。生産現場を見て作業員に話を聞いたり、打ち合わせをしたり、人とコミュニケーションをとる機会は非常に多いです。
技術職志望でコミュニケーションに不安があるという人は多いと思います。かく言う私も決してコミュニケーション得意なほうではありません。
しかし、この場合のコミュニケーションとは報連相(報告・連絡・相談)のことが主です。相手の言いたいことを正しく汲み取れること、自分や会社の要求を正しく主張することが重要です。
ものづくりや会社が手掛けている製品が好きな人
生産技術はものづくりをする仕事のため、ものづくりが好きな人は向いています。
また、会社で扱う製品が好きな人、その製品を作り出すことで社会貢献したいと考える人も向いています。
仕事をしていると目の前のことでいっぱいになってしまい、本来の目的を見失ってしまうこともあります。
製品が持つ役割を正しく理解していること、エンドユーザーのことを考えて仕事をするというのはとても重要です。
新しいことに挑戦できる人
生産技術の仕事は常に未知のことへの挑戦です。
新しい製品、新しい技術、新しい設備、新しい問題。自分のできることだけを繰り返すだけでなく、新しいことに挑戦しなければなりません。
まわりを見ていると仕事のできる人ほど新しいことに挑戦することにためらいがありません。
逆にできない人は、マニュアル化された楽な仕事ばかりに手をつけます。新しい仕事は決めなくてはならないことが非常に多いので難しいのです。
新しいことにどんどん挑戦しましょう。
大学の専攻は機械、電気が有利
生産技術は機械を扱うため、機械専攻、電気専攻が有利です。これらの学科の人は配属されやすいでしょう。
しかし、これはあくまで配属に有利というだけであり、配属後の仕事の出来にはそこまで影響はありません。
私自身、機械・電気系ではなく、図面の見方、書き方すら危うかったです。配属後のオンザジョブトレーニング(OJT)で吸収できれば十分にやっていけます。
生産技術の良いところ

ものづくりをしているという実感がある!
一番はこれだと思います。
多くのメーカーでは設計やデザイン部が仕様を決め、生産技術が工程設計を行い、製造部が量産を行うという役割になっています。
中でも生産技術は自分で工程を設計し、実際にものができるところを自分で手掛けることができます。やっていてものづくりをしている!という感覚は強いです。
ものづくりの幅広い知識が身につく!
生産技術は治具などを設計するだけでなく、低コスト高品質で作れるよう生産ラインを導入する仕事です。
生産ライン導入は非常に幅広い知識が必要で、製品自体、工法、設備の知識が必要になります。
経験年数が増えれば、工場の立ち上げといった大きなプロジェクトを扱うことになりマネジメントスキルも身につきます。
人に感謝されると嬉しい!
生産技術は主に現場作業員のサポート役になることが多いです。
正直、生産技術という職種は作業員からよく思われていないことが多いです。
- 頼んだことを全然やってくれない
- 頭でっかちで、現場作業の理解が足りない
- 現場作業者を顎で使っている
などのイメージを持たれていることが多いです。
しかし、相手の話をしっかり聞き、誠実に対応していると信頼されていきます。
「ありがとう」と感謝されることもあり、人に感謝されるというのは仕事をしていて最も嬉しいことの一つです。
転職に有利!
生産技術はものづくりの幅広い知識を得られるため、会社の製品にそれほど依存しない技術を身につけることができます。
研究開発などでは、専門性が高く求人数自体少ないので分野がマッチしないと転職が難しい面もありますが、生産技術は工場がある限り、必要な仕事です。
生産技術の悪いところ、きついところ

生産ライン第一で動かなければならない
製造業は基本的に生産ライン第一です。計画に対して遅れなく生産し製品を納めるというのが絶対です。
日々生産ラインでは設備故障、突発的な不良など様々な問題が起きます。生産技術もサポートに入ることがあります。朝から夕方までサポート業務に追われ、定時が終わりやっと自分の仕事に手をつけられる、なんてこともザラです。
連日そういった状態になることもあり、そうなると自分の時間は全くありません。しかし、それでも合間を縫って結果を出さなければなりません。そのあたりが辛いところです。
品質で妥協は許されない
製造業では作る製品に対し、100%の品質で製品を作らなければなりません。特に自動車メーカーなど人の命に関わる会社では、部品1個の不良で人が死ぬ可能性もあります。
エアバックのタカタは、大規模リコールで会社の信用をなくし経営破綻しました。
近頃IT企業などでは一旦リリースしてあとからアップデートで直していくといったやり方をしていますが、製造業でそれは難しいです。
生産技術においても100%の品質を保証する工程設計が必要になります。
仕事は80点主義で済ませなさいという言葉がありますが、完璧を目指すというのは非常に手間がかかります。
仕事の仕方が泥臭い
生産技術に関わらず、製造業はITなどの新しい技術があまり導入されていません。
もちろん1人1台パソコンは支給されエクセルやワードは使用しますが、わざわざエクセルで作ったデータを紙で印刷して回したり、書類がいちいち手書きだったり。
オンライン上で仕事を効率化させるツールなどもでていますが、うちの会社ではそういったものはほぼ使えません。ネット上に情報が流出する危険性がある、というのが使えない理由です。
本格的に仕事の仕方を見直している会社からみたらものすごく非効率なことをやっていると思います。
仕事環境が悪い場合もある
生産技術の仕事の半分は工場です。
もちろん工場によりますが、工場の環境によっては仕事環境も悪くなります。
製品や設備にふれる機会も多いため、手や作業着は油まみれということはしょっちゅうです。
時代の流れとともに作業環境は少しずつよくなってきていますが、大学や都会のきれいなオフィスなどと比較すると全然違います。笑
作業員との給料格差が気になることがある
生産技術は生産現場と強く関わりますが、作業員は主に高卒が多く、給料はかなり格差があります。
日本の会社は仕事内容よりも学歴で給料が決まります。
したがって作業員が頑張っても大卒の生産技術より給料が低いことが多いです。
このあたり割り切っている方も多く、直接の衝突の原因になることはありません。
しかし、「自分は君みたいな給料はもらってない」と言われたこともありますし、ある同期は「高い給料もらってるのにそんなこともできないのか」と言われたこともあるそうです。そんなこと言われるの嫌ですよね。
また、製造部とタッグを組んで仕事をするときに、同じ負担の仕事をする場合もあります。自分でも、給料が違うのに同じ負担なのはおかしいんじゃないか、と不思議に思うことはあります。
結局のところ生産技術はきつい?
自分の努力やどんな会社かで大きく変わる
人により差がありすぎて一概にはなんとも言えません。会社の生産技術の使い方、担当になった上司、受け持った製品や設備により千差万別です。
自分の実力、努力、どういった会社か、上司はどんな人かといった要因により大きく変わります。
私自身は不満もありますが、恵まれているほうではないかと思います。
よく比べられる設計とどちらがきついか、というとどちらも同レベルではないかと思います。
仕事がきつくなる原因は短納期
ちなみに仕事がきつくなる原因は短納期です。製品の開発からリリースまでの期間が短いほどきつくなる傾向です。
また、生産ラインに関わる仕事だと日々の生産が絶対となります。
生産で不具合が起きれば絶対に直さなければならないし、生産に必要な設備は生産までに入れなければなりません。
仕事がきつくなる人、暇になる人の特徴
人による差も激しくきつい場面になりやすい人は以下のような人です。
- 仕事ができる人
- 人気があるので仕事がたくさん舞い込みます
- 仕事が出来ない人
- 容量が悪いので仕事は溜まっていきます
- NOと言えない人、抱え込む人
- 一瞬で仕事が山のように積もります
逆に暇になるのは以下のような人です。
- 仕事ができない人
- 仕事が出来なさすぎると逆に仕事が来なくなります
どうしても仕事はできる人に集中してしまいます。日本の会社は仕事が出来なくても、クビにはなりません。
ミスを繰り返して、明らかに会社に損害しか与えてないだろう、という人でもクビになる気配すらなく驚いたこともあります。
「この人何をやらせてもだめだ」というレベルまでくると逆に暇になってしまいます。
まとめ
- 仕事内容は見積・生産導入・設備導入・生産の改善
- 勤務地は田舎か海外である可能性が高いです。
- 平均年収は約493万円です。
- 向いているのはコミュニケーション能力が高い人、ものづくりが好きな人、挑戦できる人、専攻では機械・電気系
- 良いところはものづくりの幅広い知識が身につく、転職に有利
- 悪いところは、生産ライン第一、品質で妥協できない、仕事の仕方が泥臭い、仕事環境が悪い場合もある、作業員との給料格差
- 生産技術がきついかどうかは、人により大きく差があり、仕事ができる人、抱え込む人は大変になる傾向が強いです
今回は自分の行っている生産技術という仕事について解説しました。工場の要となる重要な仕事です。
ものづくりの幅広い知識、いろんな部署を動かすマネジメントスキルが身につきます。
製造業で働きたい、ものづくりがしたい、という方は是非挑戦してみてください!
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